みじめ、運が悪いと責める経験と今はとらえていても、それがどんな大きなバランスをもたらすかわかりません

もう20年以上前、アメリカで働いてたとき、企業から派遣されたわけではないので現地のアメリカ人と同じ待遇で働いていました。日本でもらっていたお金に比べたらなんでこんなことしているのと思いました。住む場所、車の保険を払ったら他に使える余裕はないし、大学時代の同級生たちは日本の大企業からの転勤でニューヨークで働いているなんて聞くとなんかみじめな感じがしましたし、運が悪いと責めたりしましたが、今はこれでよかったなって思います。

アメリカで会社が全部お金を払ってくれて、給料もたくさんあってっていう生活をしたらそれにしがみついたと思います。またあれを実現したいと思ったと思うのです。アメリカ楽しい!アメリカはパラダイスと思ったでしょう。

アメリカの現実を知ったからこそ、アメリカはパラダイスでもないし、素晴らしい場所でもない。どこにいても自分次第なんだってそういう境地に至れたと思います。みじめ、運が悪いと責める経験と今はとらえていても、それがどんな大きなバランスをもたらすかわかりません。その経験をもとにこの経験じゃなくちゃいけないという自分を捨てられたと思います。そのほうが本当に楽です。こうじゃなくちゃいけないものが少しずつなくなっていく、楽に生きていくということですね。

伊藤仁彦