大学生の頃、アルバイトニュースでバイト先を探していた時、当時大阪でブームとなっていた「歌声喫茶」の求人募集が目に飛び込んで来ました。場所は梅田の東通り商店街の外れ。職種はピアノ演奏と歌の伴奏です。
ピアノは少しは心得があった程度の下手くそです。ダメ元覚悟で恥ずかしげもなく面接に行きました。『初見は出来るの？』 「え？初見演奏って何ですか？」 『まぁいい。ちょっとこのピアノを弾いてごらん』と言われ、子供の頃を思い出して昔習った簡単な曲の一部分を弾いてみたんだけど、『その程度では給料なんか取れないよ』と呆れられて即断即決の不合格に終わりました。
諦めて帰ろうとしていたところ、『給料はゼロだけど、雑用をしながら見習いとしてだったらしばらく来てもいいよ」と声をかけてもらうことが出来、ひょっとしてプロになれるチャンスかもしれないと一も二もなく通うことにしました。
収入が必要だったので早朝から夕方までは工事現場のガードマンのバイトをして、着替えを脇に抱え大急ぎで商店街を駆け抜け、夕方から10:30ごろまで歌声喫茶で雑用とピアノ伴奏見習いの二重生活を続けました。
今思い出すと余った時間など全くなかったはずなんだけど、時間を見つけてはピアノの前に座り数時間ぶっ通しでピアノを弾きまくったものです。指先の爪が皮膚に食い込み指先の肉が裂け、激痛が走り血が噴き出しました。
でも給料ゼロの見習いから一日も早く脱却してプロとして契約してもらいたい一心で激痛の走る指先にセロテープをグルグル巻きにして朝から晩までピアノを引き続けたのを覚えています。
その後十年間ほど、楽器演奏が私にとっての大切な生活手段となったのです。会社勤めを辞め脱サラをして新しい仕事を始めた当時はすでに結婚をしていましたが、収入がほとんどありませんでしたから、夜になればネオン街のお店を掛け持ちで移動しバンドマンとしての毎日を送りました。
その時々に周りの人から「よくやるよなぁ。信じられへんわ」と驚きの目を向けられましたが、私自身は好きでやってきた訳で、少しも辛いとかしんどいなどと思ったことはありません。
長くなりましたので続きは明日書きますね。
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