もう2~3年前になるでしょうか。木彫りの仏像を入手しアクリル絵の具を使って好き勝手に色を塗るという単純作業を毎日繰り返していました。そんなの今までやったことは無いし、もちろん絵に関しても専門家でも何でもありません。
来る日も来る日も朝から晩まで時の経つのを忘れて色を塗り続けていました。周りの人たちからは「よくそんな面倒くさいことやるわ」と呆れられたけど、やっている本人は面倒くさいなどとこれぽっちも思うことなど無く、もう止められない止まらないかっぱえびせんの世界でした。
人間って勝手なものですね。邪魔くさがりの私は自分の足の爪を切るのさえも面倒くさくてうんざりしてしまうタイプなんだけど。やりたいって思ったことに対しては食事や寝る時間も忘れてしまうほどのめり込んでしまうのです。
でも、いつまでもその暴走モードは続きません。1年ほど経ったある日「もうそろそろおしまいにしよう」と思ったその瞬間から、完成した仏像を見ることも無くなり、あれ程毎日握りしめていた筆も持つことさえ一切しなくなってしまったのです。出来上がった仏像は目の届かない離れた部屋の棚の奥にしまい込んでしまいました。
そうなると今度は「あれ?仏像の色塗りはどうしたん?」とか「もったいない」などと言う人が現れます。「もう終わった」とか「止めた」とだけ返答しています。何を言われても全然気になりません。人の心は移ろうものであり過ぎ去ってしまったことは、もう夢や幻と何も変わらない過去でしかないのです。